AI活用全般

Claude Codeで3Dフライトシムが2週間で動いた事例|Three.js+CesiumJS+Google 3D Tilesで地形を作らない設計

この記事の要点

  • ゲーム開発未経験のエンジニアが、Claude Codeを中心に2週間でブラウザ完結の3Dフライトシムを公開した事例
  • 技術スタックはThree.js・CesiumJS・Google Photorealistic 3D Tiles、地形を自作しない設計がキモ
  • Karpathyの「vibe coding」原典と、Claude Codeの料金・地形APIの課金条件まで引用ベースで整理
  • 非エンジニアが業務応用(社内シム・プロモ・教材)に接続するための分解付き

Claude Codeで3Dフライトシムを2週間、は本当か

WorldFlightSimというブラウザフライトシムが、
Xで300,000 views超を記録しました。
作者Fernando Amaral氏はゲーム開発経験ゼロのエンジニア、
制作期間は2週間、
コードの大半はClaude Codeが書いた。
この3点がセットで語られている事例です。

ソースは本人ブログ。引用するとこう書かれています。

I'm not a game developer. I'm an engineer and I understand architecture, systems, how things fit together.

Claude Code builds most of the codebase for WorldFlightSim.

two weeks, mostly nights and weekends, to go from a prototype to a real product

出典: worldflightsim.com/blog/free-flight-simulator-browser(2026年3月8日公開)

ゲーム開発者じゃなくてエンジニア、
と本人が繰り返す。
ここが大事。
設計思想が先にあって、
実装はClaude Codeに投げる。
2週間は専業ではなく「夜と週末」です。

私は個人的に、
この事例が日本語圏で「Claude Codeでマイクラ作った」系と同じ棚に並んでしまうのがもったいないと思っています。
構造的に見ると、
ブラウザ完結の3Dシムが2週間で回るのは、
Claude Codeの腕だけが理由じゃない。
地形を自作しなくていいスタックが裏にあるからです。

技術スタックは何でできているのか

WorldFlightSimと関連ポストで確認できるスタックを表にまとめます。

要素採用技術ライセンス/料金
AIコーディングClaude CodePro $20/月〜(2026年4月時点)
3D描画Three.jsMIT(無料・OSS)
3Dグローブ/地図CesiumJS 1.137Apache 2.0(無料・商用可)
実地形データGoogle Photorealistic 3D Tiles月間1,000件まで無料/超過$6.00 per 1,000件
ビルドViteMIT(無料)
基礎言語HTML/CSS/JavaScript

支持ポストの@om_patel5氏は短くこうまとめています。

THIS GUY VIBE CODED A FULL FLIGHT SIMULATOR WITH CLAUDE CODE real world terrain, real locations, and you can fly anywhere on earth. AND it runs in your browser. built with Three.js and CesiumJS you can seriously build anything in a weekend

出典: x.com/om_patel5/status/2038074044793155700

見落とされがちな論点がひとつ。
このスタックの核は、
Three.jsやCesiumJSそのものより Google Photorealistic 3D Tiles だと私は見ています。
地球規模の航空写真と3D地形を、
APIコールだけで引き出せるからです。

Google公式ドキュメントはこう書いている。

Photorealistic 3D Tiles provides immersive 3D models with global coverage [...] updated daily quotas apply.

出典: developers.google.com/maps/documentation/tile/3d-tiles

つまり「世界中の3D地形を自作しない」ための土台がAPIで降ってくる。
ここが消えた壁です。

Karpathyの「vibe coding」って結局なにか

WorldFlightSim関連ポストで連呼される「vibe coded」は、
Andrej Karpathy氏が2025年2月2日に投稿したツイートが原典です。
4.5百万 views超の投稿で、
本人の肩書きは当時Eureka Labs Founder(2024年7月設立のAI教育スタートアップ)。
元OpenAI共同創業者・元Tesla AI Directorという経歴もあわせて語られます。

There's a new kind of coding I call "vibe coding", where you fully give in to the vibes, embrace exponentials, and forget that the code even exists. [...] I "Accept All" always, I don't read the diffs anymore. [...] I'm building a project or webapp, but it's not really coding - I just see stuff, say stuff, run stuff, and copy paste stuff, and it mostly works.

出典: x.com/karpathy/status/1886192184808149383(2025年2月2日)

ざっくり言えば「LLMに投げて、
差分は読まず、
Accept Allで進める」スタイル。
正直、
実務の本番コードでこれをやると怖い。
ただ、
プロトタイプや週末プロジェクトでは「動くモノが先」の原則が噛み合う、
とKarpathy本人も限定しています。

Karpathyは後日、
このツイート自体を「a shower of thoughts throwaway tweet that I just fired off」と振り返っている(出典)。
本人にとっても軽い投稿だったのが、
バズって一人歩きした言葉。
WorldFlightSimはその言葉に具体像を与えた格好です。

なぜゲーム開発未経験で2週間で回せたのか

普通、
フライトシムの壁は3つあります。
地形データ、
物理モデル、
UI/入力処理。
WorldFlightSimは1つ目をGoogle 3D Tilesで消し、
残り2つをClaude Codeに投げた。
この配分が肝です。

本人ブログには、依頼の粒度まで書かれています。

build a flight physics model for a single-engine prop aircraft → first pass working code

出典: worldflightsim.com/blog/free-flight-simulator-browser

「単発プロペラ機の飛行物理モデルを作って」と英語で注文し、
動く初版コードが返る。
ここが2026年のコーディング風景です。
ゼロから三角関数を書かせるんじゃなくて、
設計仕様を文で渡して、
実装を任せる。
Karpathy型のスタイルがそのまま現れています。

本人はAI活用を「AI serves as his CTO, team of developers, and more」「the magic of building in 2026」と表現している(出典: worldflightsim.comブログ)。
CTOも開発チームもAI、
はさすがに盛った表現だと思いますが、
設計を持てる個人が実装を丸ごと外注できる時代の空気は、
この一文に凝縮されています。

これ、正直しびれる。

Google Photorealistic 3D Tilesの料金は本当に安いのか

「無料枠で個人は十分」という語りには注意が要ります。
Google公式の現行料金(2025年3月1日以降の新体系)はこうです。

項目条件
無料枠月間1,000イベント(Enterprise SKU枠)
超過料金$6.00 per 1,000件
日次上限ルートタイルセットクエリ最大10,000件/日
セッション換算ルートタイル1件=最大3時間のタイルリクエスト相当
出典: Google Maps Platform Usage and Billing

月間1,000イベントは、
50人がそれぞれ1セッション使ったらほぼ枯れる規模です。
個人の実験・プロトタイプ・社内デモなら足りる、
くらいに受け取っておくのが安全。

Cesiumコミュニティでは料金批判も出ています。

Google has a really bad pricing model [...] actively punishes web developers [...] super exploitative [...] costs increased by a factor of 10X in one month.

出典: community.cesium.com/t/google-3d-tiles-cost(Nucleon氏の投稿)

同コミュニティのmz2008氏は、
1日300ルートリクエスト到達で地図が読めなくなったと報告しています(出典)。
規模試算としては「100,000ビュー/月で約$400、
500,000ビュー/月で約$2,440」という数字も同コミュニティで出回っています。

個人実験なら無料でいける。
SNSで軽くバズったら数千ビューで月数十ドル、
メディア露出が続けば月数百〜数千ドル。
この温度感で料金設計を見ておいたほうが安全です。

非エンジニアが真似るなら、どこから切るのか

この事例を「すごいね」で終わらせない読み方を書きます。
私はフライトシムを作る気はないのですが、
同じ構造は業務に転用できます。

  • 社内トレーニング用3Dシム: 工場レイアウトや店舗巡回をCesiumJS+自社の平面図データで再現。Claude CodeにUIと動作ロジックを書かせる
  • プロモ用ブラウザ体験: 自社商品の置き場所・配送ルート・観光ルートをGoogle 3D Tilesで可視化。閲覧者規模が小さいうちは無料枠で済ませる
  • 教材・社内説明資料: インストール不要のブラウザ体験は、情シスと相談しなくていい強みがある

重要なのは「地形を作らない」「物理は既知モデルを言語で発注」「UIはClaude Codeに一任」の3点セットが使える範囲を見分けることです。
ゼロから新ジャンルの物理を発明する案件は、
相変わらず専門職の仕事。
既知の物理+既知の地形データ+既知のWebスタックでいいやつは、
個人でも2週間MVPが現実になってきた。

Claude Code自体の料金感も確認しておきます。
Pro $20/月、
Max 5x $100/月、
Max 20x $200/月(2026年4月時点、
出典: claude.com/product/claude-code)。
月$20のProで2週間×夜と週末、
という時間軸は個人プロジェクトとして現実的です。

賛否はどう割れているか

反応はきれいに二分されています。
賛側はHacker Newsの「I'm 60 years old. Claude Code has re-ignited a passion」スレッド(1086ポイント・989コメント、
2026年3月16日、
出典)が象徴的。
50代・60代エンジニアが「フレームワーク追従地獄から解放された」「設計だけ分かっていれば実装は任せられる」と語っています。

否側は同スレッドに出ている60代エンジニアkitd氏の発言が鋭い。

エージェントは設計・構築・テスト・完成の満足感を削除した。
機械化された機織機の時代の織職人のような違和感がある。

出典: news.ycombinator.com/item?id=47282777

職能が崩れる違和感。
これは感情の問題だけじゃなく、
品質と責任の問題でもあります。

品質面では固い数字が出ている。
Veracode GenAI Code Security Report 2025は「45% of AI-generated code introduces security vulnerabilities」(出典)、
CodeRabbit調査は「AI-generated code has 70% more errors than human-written code」(出典)。
Checkmarxの2025年12月評価ではClaude Code含む主要5ツールで15アプリ中69件の脆弱性、
うち数件が"critical"(出典)。

「vibe codeで本番」はまだ無理。
ただ「vibe codeでMVP、
本番前に人がレビュー」なら成り立ちます。
WorldFlightSimのような個人プロジェクトと、
顧客データを扱う社内システムは、
同じClaude Codeでもリスク設計が違うという当たり前の線引きです。

FAQ

WorldFlightSimは日本からも遊べますか

トップページはworldflightsim.comで公開されています。
ブラウザ動作のため原理的には地域制限はなさそうですが、
アクセス状況やGoogle 3D Tilesのクォータ状況で挙動が変わる可能性はあります。
最新の稼働状況は本家トップと@fmfamaralポストで確認してください。

Claude Codeは無料で使えますか

無料プランはありません。
Pro $20/月からの有料プラン、
もしくはClaude APIの従量課金が必要です(出典: claude.com/product/claude-code)。
対応OSはmacOS・Linux・Windowsです。

Google Photorealistic 3D Tilesは本当に無料で始められますか

開始時はGoogle Cloud Consoleで請求アカウント設定とAPIキー取得が必要です。
月間1,000イベントまで無料、
超過は$6.00 per 1,000件(公式料金ドキュメント)。
2025年3月1日に旧$200クレジット体系から変わっているので、
古い記事の情報は使わないほうがいいです。

非エンジニアでも真似できますか

「完全未経験」は厳しいと思います。
Fernando Amaral氏本人も「I'm an engineer and I understand architecture, systems」と書いています(出典)。
アーキテクチャ理解があれば実装はClaude Codeに任せられる、
という範囲の話。
ただ、
Zennには非エンジニアがClaude Codeで15,000行のRPGを作って初収益を得た記録もある(出典)ので、
粒度を絞れば道は開いています。

vibe codingはそのまま業務で使っていいですか

セキュリティ系の調査では、
AI生成コードの45%に脆弱性、
70%のエラー増という数字が出ています(Kaspersky
CodeRabbit)。
Karpathy本人も元ツイートで「throwaway weekend projects」向けと限定している。
MVPや社内プロトは攻め、
顧客データや決済が絡むものは人のレビューを必ず挟む、
という使い分けが無難です。

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