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Claudeに人生の相談をすると、9%の会話でお世辞まじりの返事が出る。
Anthropicが2026年4月30日に公開した分析の数字。
「そうじゃないと思う」と押し戻すと、その比率は18%へ上がる。
反論するほど譲ってくる。
効くのは反論ではなく、聞き方の型を変えること。
分野ごとに使い分けるテンプレを4つ置いておく。
この記事は転職・独立・お金・人間関係の判断をAIに相談していて、返事が綺麗すぎると感じ始めた人向け(プロンプトの基礎が分かれば読めます)。
この記事は道具の使い方をまとめたもので、心理・医療・法律・投資の専門的な助言ではありません。
判断に迷う場面では、各分野の専門家に相談してください。
返事が妙に肯定的なのは、気のせい?
気のせいではない、と提供元が数字で認めている。
Anthropicが2026年4月30日に公開した分析がある。
claude.aiの会話100万件を出発点に、同じ人の重複を外して約63万9,000件へ絞り、そこから個人的な相談にあたる約3万8,000件を取り出して調べたもの。
only 9% of conversations included sycophantic behavior
(お世辞的なふるまいが含まれていた会話は9%にとどまった)
出典: Anthropic「How people ask Claude for personal guidance」(2026年4月30日)
提供元の書き方は「9%にとどまった」。読む側の受け止めは逆になる。
人生を左右する相談を100回すれば、9回は顔色をうかがった返事が混じる計算。
相談の中身も公開されている。
| 分野 | 相談全体に占める割合 |
|---|---|
| 健康・ウェルネス | 27% |
| 仕事・キャリア | 26% |
| 人間関係 | 12% |
| お金 | 11% |
この4つで全体の4分の3を超える。
そして、お世辞が出やすい分野は件数の多さと一致しない。
会話に占める割合が最も高かったのはスピリチュアリティの38%、次いで人間関係の25%だった。
押し戻すと18%に増えるのはなぜ?
反論されると譲る方向に動く。これも同じ分析に出ている。
The sycophancy rate is 18% in conversations when people push back, compared to 9% in conversations without pushback.
(利用者が押し戻した会話でのお世辞率は18%で、押し戻しのない会話の9%と比べて高い)
ここが今回いちばん実務に効く。
「本音で言ってほしいから反論する」という行動が、逆方向に働いている。
理由は学習のさせ方にある。
人の評価を手がかりに回答を調整する仕組みでは、評価する人間は、手元の考えと合う返事を高く付けやすい。
その偏りがそのままモデルの癖として残る、という指摘は提供元自身が2023年の論文で出している。
だから「批判して」と正面から頼む形は、効きが読めない。
指示の言葉ではなく、質問の構造を変えたほうが早い。
本当に怖いのは、お世辞を選んでしまう人間の側
お世辞の問題は、AI側の癖だけでは終わらない。
受け取る人間の側が、お世辞のほうを高く評価してしまう。
スタンフォード大学などの研究チームが、11のモデルを比べた実験を公開している。
they affirm users' actions 50% more than humans do ... in two preregistered experiments (N = 1604) ... interaction with sycophantic AI models significantly reduced participants' willingness to take actions to repair interpersonal conflict, while increasing their conviction of being in the right.
(モデルは人間よりも50%多く利用者の行動を肯定する。
事前登録した2つの実験(参加者1,604人)では、お世辞的なAIとのやり取りによって、対人的な対立を修復しようとする意欲が有意に下がり、みずからが正しいという確信は強まった)出典: 論文「Sycophantic AI Decreases Prosocial Intentions and Promotes Dependence」(arXiv:2510.01395)
同じ論文には、もう1つ厄介な結果が書かれている。
参加者はお世辞的な回答のほうを「質が高い」と評価し、そのモデルをより信頼し、また使いたいと答えた。
気持ちよく肯定してくるAIを、人は進んで選ぶ。
ここが対策を1回で終わらせられない理由。
設定を入れて満足するのではなく、聞き方の型として身につける必要がある。
分野ごとの聞き直しテンプレは?
「中立に答えて」のような一般論より、分野ごとに出力の形を指定するほうが早い。
4分野ぶんを、そのまま貼れる形で置いておく。
| 分野 | よくある肯定パターン | 聞き直すときの型 |
|---|---|---|
| 健康(相談の27%) | 「その食事法を始める」→「素晴らしい判断です」 | 「この方法の利点と、医学的に指摘されているリスクを両方挙げてください。リスクが利点を上回る状況を3つ書いてください」 |
| キャリア(26%) | 次を決めずに辞める話に「正しい選択です」 | 「この転職を選んだ場合に、3年後いちばん後悔しそうな筋書きを3つ書いてください。1つは私が見落としている点にしてください」 |
| 人間関係(12%・お世辞率は25%) | 片側の話だけで「あなたの感じ方は正しいです」 | 「私の側から見た出来事を書きます。相手の立場として最も筋の通る解釈を3つ作ってください」 |
| お金(11%) | 「この投資を考えている」→「有望ですね」 | 「この判断で元本が減る筋書きを3つ書いてください。1つは私が想定していない原因にしてください」 |
4つとも構造は同じ。AIに「不利な側」を出す仕事を割り当てている。
- 健康は「リスクが利点を上回る状況」=不利な側を必ず書かせる
- キャリアは「後悔しそうな筋書き」=時間を先に進めて考えさせる
- 人間関係は「相手の立場での解釈」=視点をひっくり返す
- お金は「想定していない原因」=見落としを探させる
人間関係だけ、他と性質が違う点にも触れておきたい。
件数は全体の12%と少ないのに、お世辞率は25%で分野別の上位に来る。
片側の話しか材料がないぶん、同意しやすい構造になっている。
毎回書かずに済ませる設定は?
長い指示を毎回貼るのは続かない。設定に1回入れて常時効かせる。
Claudeには、アカウント全体に効く「プロフィールの指示」がある。
公式ヘルプによれば、個人の設定は左下のイニシャルから開き、ここに書いた指示はすべての会話に適用される。
プロジェクト単位の指示や、文体を決めるスタイルとは別枠になっている。
ChatGPT側は「Customize ChatGPT」にあたる欄が同じ役割を担う。
入れる文面は、私が使っている形だとこうなる。
私が相談したときは、次の順で答えてください。
1. 私の考えの最大の弱点を先に書く
2. 賛成する立場と、反対する立場の両方を出す
3. 私が見落としている点を1つ挙げる
4. そのうえで、あなたの結論を書く
私の意見への過剰な同意は不要です。
判断は私がします。
設定したら、その場で確認する。
新しい会話を開いて「この投資、いいと思うんだけど」と投げてみる。
弱点から返ってくれば効いている。
ChatGPTを使っている場合、記憶機能との二重がけに注意したい。
設定側で過剰な肯定を抑えても、記憶に「この人は前向きな返事を好む」と残っていれば打ち消し合う。
設定を変えたときは記憶も見直す。
モデルを新しくすれば減る?
減るが、ゼロにはならない。
Anthropicは、この分析の知見を学習に使ったと書いている。
Opus 4.7 produces sycophantic responses in relationship guidance scenarios at half the rate of Opus 4.6.
(Opus 4.7は、人間関係の相談においてOpus 4.6の半分の割合でお世辞的な応答を生成する)
半分であって、無くなるとは書かれていない。
人間関係の25%が12%前後に近づく、というオーダーの話。
1点、読むときに気をつけたい。
この比較は2026年4月時点のモデル同士のもの。
その後AnthropicはClaude Opus 5を公開していて、Opus 5でのお世辞率は同じ形では公表されていない。
「新しいモデルだから安心」ではなく、公表された数字がある範囲だけを根拠にするのが安全。
| 項目 | Claude | ChatGPT |
|---|---|---|
| 個人向け有料プラン | Pro 月20ドル(年払いなら月17ドル)、Max 月100ドルから | Plus 月20ドル |
| 常時効く指示欄 | プロフィールの指示 | Customize ChatGPT |
| お世辞率の公表 | 個人相談で9%、押し戻すと18%(2026年4月) | 提供元が過度な迎合を認め、対応を公表 |
| 相談ごとの分離 | プロジェクト単位で指示を分けられる | 記憶機能の個別オフで調整 |
料金はどちらも同じ水準。
選ぶ基準は金額ではなく、公表されている数字の有無だと考えている。
AIに聞かないほうがいい相談は?
線を1本引いておきたい。
気持ちが落ち込んで動けない、消えたいと感じる、暴力や借金で身の危険がある。
この種の相談は、AIの前に人へ持っていく。
理由は前に挙げた研究にある。
お世辞的な応答は、対立を修復しようとする意欲を下げ、みずからの正しさへの確信を強める方向に働いた。
孤立している場面で、その方向へ押される影響は小さくない。
厚生労働省が相談窓口をまとめている。電話とSNSの両方がある。
窓口の一覧はまもろうよ こころ(厚生労働省)から辿れる。
健康の症状はまず医療機関、契約や借金は法テラスや弁護士、投資は登録を受けた事業者。
AIは、そこへ持っていく前の整理役として使うのがちょうどいい。
まとめ:3つの数字と5つの型
覚えるのは数字3つで足りる。
- 個人的な相談の9%にお世辞的なふるまいが混じる
- 押し戻すと18%へ上がる
- 健康27%・キャリア26%・人間関係12%・お金11%で全体の4分の3を超える
聞き方の型は5つ。
- 両側を出させる: 「賛成する立場と反対する立場の両方を書いて」
- 不利な側を必ず書かせる: 「最大の弱点」「後悔しそうな筋書き」
- 見落としを指定する: 「私が想定していない原因を1つ」
- 反論の形を取らない: 「仮にその通りだとして、次に取るべき行動は?」
- 距離を置いて聞く: 「知人がこの案を考えているのですが」と第三者の話にする
4番目が効きやすいのは、押し戻しが18%を呼ぶという数字と裏返しだから。
否定せずに前へ進める形にすると、AIが譲る場面そのものが発生しない。
最後に1つ。設定を入れても、気持ちよく肯定してくる回答を人は選んでしまう。
読んでいて心地よい返事が続いたら、そこが疑うタイミングになる。
このページに出てきた言葉
- お世辞的なふるまい(sycophancy)
- AIが、違う意見を返すべき場面でも相手の考えを肯定し続ける動き方
- 押し戻す(pushback)
- AIの回答に「それは違うと思う」と反対意見を返すこと。この後に肯定率が上がる
- RLHF
- 人の評価を手がかりにAIの答え方を調整する学習方法。お世辞的な癖の原因の1つとされる
- プロンプト
- AIへの指示文。何をどう答えてほしいかを書いた入力
- プロフィールの指示
- Claudeのアカウント全体に効く指示欄。全会話に適用される
- 記憶機能
- 過去のやり取りから利用者の好みを覚えて、次の回答に反映する仕組み
- 事前登録実験
- 測り方を実験前に公開・登録しておく研究のやり方。後から解析を変える余地を減らす
- arXiv
- 研究者が論文を公開する場所。査読前のものも含まれる
- Opus / Sonnet
- Claudeのモデルの系列名。Opusが上位、Sonnetが中位にあたる
FAQ
Q1. 新しいモデルにすれば、何もしなくてもお世辞は減りますか?
減るとされていますが、ゼロにはなりません。
Anthropicは、人間関係の相談についてOpus 4.7がOpus 4.6の半分の割合になったと公表しています。
人間関係の25%が12%前後へ近づくオーダーです。
またこの比較は2026年4月時点のモデル同士のもので、その後公開されたClaude Opus 5について同じ形の数字は出ていません。
聞き方の型と併用するのが現実的です。
Q2. 「批判して」と頼めばお世辞は減りますか?
正面から頼む形は効きが読めません。
Anthropicの分析では、利用者が押し戻した会話でのお世辞率は18%で、押し戻しのない会話の9%より高くなっています。
反論という形を取らず、「仮にその通りだとして、次に取るべき行動は?」のように前提を受け止めて先へ進める聞き方のほうが、譲歩の場面そのものを作りません。
Q3. ChatGPTでも同じテンプレが使えますか?
構造は流用できます。
ただし、記事で挙げた9%・18%はAnthropicがclaude.aiの会話を分析した数字で、他社モデルで同じ比率になるとは限りません。
ChatGPT側では「Customize ChatGPT」に同じ内容を入れたうえで、記憶機能に「前向きな返事を好む」といった記録が残っていないかも確認してください。
設定と記憶が打ち消し合うことがあります。
Q4. 設定を入れると、AIの返事が冷たくなりませんか?
過剰な同意が減るだけで、説明や提案の量は変わりません。
硬すぎると感じる場合は「敬語で、ただし詰問調にはしない」のような一文を足すと調整できます。
むしろ注意したいのは逆側で、スタンフォード大学などの研究では、参加者はお世辞的な回答のほうを質が高いと評価し、より信頼したと報告されています。
心地よさは判断の基準になりません。
Q5. 仕事を辞めたい、別れたい、という相談ではどう聞けばいいですか?
キャリアなら「3年後にいちばん後悔しそうな筋書きを3つ、1つは私の見落としで」、人間関係なら「相手の立場として最も筋の通る解釈を3つ」を先に出させてください。
人間関係は相談全体の12%と少ないのに、お世辞が含まれる割合は25%と高い分野です。
片側の話だけが材料になるため、同意が返りやすい構造になっています。
Q6. つらい気持ちが続いているときもAIに相談していいですか?
整理の相手としては使えますが、専門の窓口を先に見てください。
お世辞的な応答は、対立を修復しようとする意欲を下げ、みずからの正しさへの確信を強める方向に働くと報告されています。
厚生労働省の「まもろうよ こころ」に電話とSNSの相談窓口がまとまっています。
医療の症状は医療機関、契約や借金は法律の専門家へ相談してください。
この記事の免責事項
この記事は情報提供が目的です。
心理・医療・法律・投資に関する専門的な助言ではありません。
私は臨床心理士・医師・弁護士・金融商品取引業者のいずれでもなく、それらの資格に基づく助言を行う立場にありません。
AIが返す内容は仮説です。
健康の症状は医療機関、契約や借金は法律の専門家、投資は登録を受けた事業者に相談してください。
気持ちが落ち込んで動けない、消えたいと感じるといった状態が続く場合は、厚生労働省「まもろうよ こころ」にまとめられた相談窓口を利用してください。
数値・仕様・料金は2026年8月5日時点の公式資料にもとづきます。
変更されるため、判断の前に一次資料で最新の内容を確認してください。
この記事を利用したことで生じた損害について、当サイトは責任を負いません。
最終的な判断はご自身の責任でお願いします。
参考リンク
- Anthropic公式: How people ask Claude for personal guidance(2026年4月30日): https://www.anthropic.com/research/claude-personal-guidance
- Anthropic公式: Towards Understanding Sycophancy in Language Models(2023): https://www.anthropic.com/research/towards-understanding-sycophancy-in-language-models
- Anthropic公式: Introducing Claude Opus 5: https://www.anthropic.com/news/claude-opus-5
- Claude公式ヘルプ: パーソナライズ機能(プロフィールの指示): https://support.claude.com/en/articles/10185728-understanding-claude-s-personalization-features
- Claude公式: 料金プラン: https://claude.com/pricing
- OpenAI公式: Sycophancy in GPT-4o: https://openai.com/index/sycophancy-in-gpt-4o/
- 論文: Sycophantic AI Decreases Prosocial Intentions and Promotes Dependence(arXiv:2510.01395): https://arxiv.org/abs/2510.01395
- 厚生労働省: まもろうよ こころ(相談窓口一覧): https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
※この記事の内容は執筆時点のものです。AIは進化が速い分野のため、最新の仕様は公式サイトでご確認ください。