この記事の結論
ChatGPTには上手く書けるのにMidjourneyだと急に下手なプロンプトになる、
その「ツール別の壁」を1スキルでまとめて翻訳してくれるのが「Prompt Master」です。
Claude公式スキル形式のオープンソース(GitHub nidhinjs/prompt-master)で、
無料・MITライセンス・対応ツール30以上、
6,000スター超えという規模。
私が特に注目しているのは、
PAC2026という配置ルール(30/55/15比率)と、
未収録ツールにも4問だけで対応するUniversal Fingerprintの2点。
Claudeを契約済みでツール毎にプロンプトを毎回ググっている層には、
覚える対象を1個に減らせる選択肢になります。
この記事はClaudeを既に契約していて、
画像・動画・コード生成AIも複数使い分けている初〜中級ユーザー向け(GitHubからZIP(圧縮ファイル)をダウンロードできるレベルが分かれば読めます)。
そもそもPrompt Masterって何のスキル?
Prompt Masterは、
Claude公式の「skill(スキル:Claudeに特定の能力をまとめて教える指示書セット)」形式で配布されている、
プロンプト自動生成ツールです。
使い方の構造はシンプルで、
Claudeに対して「このツール向けにこういう感じで作りたい」と日本語で投げると、
ターゲットのAIツールを自動検出し、
最大3問の補足質問を挟んで、
そのツールに最適化された英語プロンプトを返す、
という流れになります。
GitHubはnidhinjs/prompt-master。
リポジトリ(GitHub上のコード保管場所)が作られたのは2026年3月11日で、
約2ヶ月で6,000スターを超えました。
Claudeスキルとしてはかなり異例の規模。
公式READMEはスキルの設計哲学についてこう書いています。
The best prompt is not the longest. It's the one where every word is load-bearing.(最良のプロンプトは最長のものではない。
すべての語が役割を担っているプロンプトだ)
個人的にはこの一文がスキルの方向性を全部表していると感じます。
長くて凝ったプロンプトを書かせるのではなく、
無駄を削った1発で済ませる側の設計。
Prompt Masterは具体的に何のツール向けに書いてくれる?
公式READMEに記載されている対応ツールは30以上。
カテゴリごとにまとめると以下になります。
| カテゴリ | 対応ツール例 |
|---|---|
| 推論LLM(チャット型AI) | Claude / ChatGPT / Gemini / o3 / o4-mini / Ollama / Qwen / DeepSeek-R1 / MiniMax |
| コードIDE(プログラミング向け) | Claude Code / Cursor / Windsurf / Cline / GitHub Copilot |
| フルスタックジェネレーター | Bolt / v0 / Lovable / Figma Make |
| 画像AI | Midjourney / DALL-E 3 / Stable Diffusion / ComfyUI |
| 動画AI | Sora / Runway |
| 音声AI | ElevenLabs |
| 自動化 | Zapier / Make |
| 自律エージェント | Devin |
出典: README対応ツール一覧。
私が一番効きそうだと感じているのは、
画像と動画のカテゴリ。
MidjourneyとSoraは書き方の作法がClaudeと全く違うので、
ここを翻訳してくれる存在は大きい。
ちなみに対応していないツールが出てきたときの仕組みも用意されています。
これがUniversal Fingerprintという機能で、
4問の質問だけで未収録ツールに合わせたプロンプトを組み立てる、
という設計(出典: README)。
質問の中身までは公式に開示されていませんが、
新しいAIツールが毎週出てくる現状を考えると、
このフォールバック設計は地味に効いてきます。
なぜ私はPrompt Masterに注目しているのか
注目している理由は4つに整理できます。順番に見ていきます。
理由1: PAC2026という配置ルール(30/55/15)が固有数字で説明されている
Prompt Masterの中核設計が、
PAC2026という配置ルールです。
プロンプトを3つのゾーンに分けて、
それぞれに割合を決めて配置する設計になっています。
| ゾーン | 比率 | 置く内容 |
|---|---|---|
| Primacy Zone(頭) | 30% | 役割・前提・制約の宣言 |
| Middle Zone(中) | 55% | 具体指示・例・実行ロジック |
| Recency Zone(末尾) | 15% | 出力形式・検証・最終制約 |
出典: DeepWiki アーキテクチャ解説。
学術的な背景はLLMのU字型注意バイアス(入力の頭と末尾に注意が集中する性質)を補正する設計で、
参考論文は「Found in the Middle」(arXiv:2406.16008)。
正直、
ここまで数字で配置ルールを切ってある日本語の解説は他に見当たらないので、
固有数字を引きやすいのが大きい。
「最適な比率で」みたいな曖昧表現ではなく30/55/15と切ってあると、
私のプロンプトが偏っていないか、
書いた本人が比率で判定できます。
理由2: 「使わない手法」を明示的に排除している
Prompt Masterが意図的に除外している手法は4種類あります。
- Tree of Thought(思考の木)
- Graph of Thought(思考のグラフ)
- Universal Self-Consistency(万能自己一貫性)
- prompt chaining(プロンプト連鎖)
これらは流行している高度プロンプト技法ですが、
ハルシネーション(AIが事実と違う答えを自信満々で返す現象)を誘発しやすいという理由で外されています(出典: patterns.md)。
私の見方では、
ここの「やらない理由」を明示している姿勢が、
ふわっとした「ベストプラクティス紹介系」と差がつくポイント。
理由3: Opus 4.7専用テンプレート(Template M)が追加された v1.6.0
2026年4月のv1.6.0で、
Claude Opus 4.7向けの専用テンプレートが追加されました。
Added Template M (Opus 4.7 Task Brief). Updated Claude and Claude Code routing for literalism, adaptive thinking, xhigh effort, and session hygiene.(Template M「Opus 4.7 Task Brief」を追加。
Claude / Claude Codeのルーティングを literalism・adaptive thinking・xhigh effort・session hygiene に対応するよう更新)
literalism(指示を逐語的に追従させるモード)と xhigh effort(最大努力モード)への対応は、
Opus 4.7を契約している層には直接効きます。
Opus 4.7を主軸に運用している層にとっては、
テンプレートMの追加だけで導入理由が立ちます。
理由4: MITライセンス(無料・商用OK・改変OK)
ライセンスはMIT。
商用利用も改変も配布も可能で、
求められるのは元の著作権表示の保持だけです。
Claudeを契約していれば追加課金なしで動作するので、
コスト面のリスクはゼロ。
これは触る前のハードルがかなり低い設計。
13個のテンプレート(Template A〜M)はそれぞれ何向け?
Prompt Masterは検出したターゲットツールと意図に応じて、
13個のテンプレートのいずれかにルーティングします。
代表的なものを整理しました。
| テンプレート | 正式名 | 得意な用途 |
|---|---|---|
| A | RTF(Role / Task / Format) | 単発の小さいタスク |
| B | CO-STAR | ライティング全般、トーン指定が必要なもの |
| C | RISEN | 複数ステップのプロジェクト |
| D | CRISPE | クリエイティブ系、ペルソナ設定込み |
| E | Chain of Thought | 論理推論、`<thinking>`タグ付き |
| F | Few-Shot | 例示で形式を覚えさせる |
| G | File-Scope | コード編集(ファイル境界の正確な指定) |
| H | ReAct + Stop Conditions | 自律エージェント、禁止アクション付き |
| I | Visual Descriptor | 画像生成(被写体・スタイル・照明) |
| J | Reference Image Editing | 既存画像の修正 |
| K | ComfyUI | ノードベースワークフロー |
| L | Prompt Decompiler | 既存プロンプトを分解・簡略化 |
| M | Opus 4.7 Task Brief | 複雑・多段階・エージェントタスク向け(v1.6.0で追加) |
出典: templates.md。
13個も用意するのはやり過ぎな気もしますが、
用途を絞り込んで毎回同じ型でプロンプトが返ってくるなら、
再現性は上がるはず。
具体的にどう活用できる?(3シナリオ)
READMEと対応ツール表から、
Q1の読者層が直接使いそうな活用シナリオを3つ整理します。
- Midjourneyの画像プロンプトをClaudeで書かせる: Visual Descriptor(テンプレートI)にルーティングされ、被写体・スタイル・照明・雰囲気を構造化した英語プロンプトが返る。日本語のラフ指示から始められる
- Cursorに渡すコード編集指示を整える: File-Scope(テンプレートG)でファイル範囲とスコープを正確に切ったプロンプトに変換される。「ここだけ直せ」と曖昧に書きがちな指示を境界明示型に
- Soraの動画生成プロンプトを書く: Visual Descriptor系のルーティングで、シーン・カメラ動作・尺の指定が入った英語プロンプトに整形される
正直、
画像と動画は書き方の作法がチャット型AIと全く違うので、
ゼロから覚えるよりスキルに翻訳してもらう方が早いと感じます。
Prompt Masterを実際に使い始める手順(公式READMEベース)
導入の流れは公式READMEとAnthropic公式の「Use skills in Claude」ガイドに記載があります。
それを再構成すると、
最短ルートはこの5ステップ。
- Claudeの「Code execution」を有効にする: claude.ai → Settings → Capabilities でコード実行をオン。これがOFFだとカスタムスキルのZIPアップロードができません(出典: Use skills in Claude)
- GitHubからZIPを取得: nidhinjs/prompt-master の「Code」ボタン → 「Download ZIP」をクリック。リポジトリの中身がそのままZIPになります
- セキュリティ監査を先にやる: ZIPを展開し、SKILL.md・全スクリプト・画像・その他リソースに目を通す。Anthropic公式は「Treat like installing software(ソフトウェアのインストールと同様に扱え)」と明記しています(出典: Agent Skills overview)。確認するのは「予期しないネットワーク呼び出し」「想定外のファイルアクセス」「説明と一致しない操作」の3点
- Claudeにスキルとしてアップロード: claude.ai上のスキル管理画面からZIPをアップロード。スキルがレベル1(メタデータのみ)で登録され、必要な場面でレベル2〜3の本体がロードされる仕組み
- 会話で呼び出す: 「Midjourney用のプロンプトを書いて」「Cursorでこのファイルを編集する指示を整えて」のように依頼。ターゲットツールが自動検出され、必要なら最大3問の補足質問が入り、最終的にPAC2026構造のプロンプトが返ります
ステップ3が一番引っかかりやすいポイント。
MITライセンスのオープンソースとはいえ、
Anthropic公式が「外部ソースのスキルは原則非推奨、
使う場合は thoroughly audit」と明示している以上、
ここを飛ばすのは設計思想に逆らう動き。
注意しておきたい点(事前に知っておくと損しない)
注目している側として、見落とすと痛い点も書いておきます。
Claudeスキル基盤側の不安定動作
GitHub上のClaude Codeリポジトリには、
スキルが読み込まれない不具合の報告が複数あります。
- Issue #26254: 「ユーザー・組織スキルのメタデータはシステムプロンプトに登録されるが、SKILL.mdファイルがコンテナにマウントされない」(出典: anthropics/claude-code Issues)
- 関連報告: 「36個のスキル登録されるもランタイムで出現しない」「~/.claude/skills/からのスキル読み込み失敗」「セッション間でスキルが消失」
- GitHub Community Discussion #182117: 「5つ有効化しても0〜3個しか実際に読み込まれない」(出典: Community Discussion)
これはPrompt Master固有の問題ではなく、
Claude Skills基盤側の発展途上な部分。
現時点の運用では「動かない時もある」という前提で構えておく方が安全です。
ツール側の能力以上は出ない
Prompt Masterはあくまでプロンプトの整形役で、
ターゲットツールの能力を超えた出力を引き出す魔法ではありません。
Midjourneyが苦手な構図はPrompt Masterで書き換えても苦手のまま。
ここを誤解すると期待値とズレます。
曖昧な指示には必ず質問が入る
Prompt Masterの設計思想は「Claudeが不確かな場合は推測しない(cannot guess wrong)」。
曖昧な依頼には必ず最大3問の補足質問が挟まります。
即座に1発で返答が欲しい人にはひと手間。
逆に、
雑に投げても精度を落とさない安全弁とも言えます。
料金は本当にゼロ?
料金はスキル本体が完全無料(MITライセンス)。
動かすために必要なのはClaude契約だけで、
Free / Plus / Pro / Max / Team / Enterpriseのいずれでも動作します(コード実行機能を有効化する前提)。
出典はAnthropic公式 Use skills in Claude。
追加API課金やサブスクリプションは発生しないので、
Claudeを既に契約している層にとってはゼロ円で試せる選択肢。
これは触らない理由を作る方が難しい。
Prompt Master基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供形態 | Claude公式スキル(GitHub配布、ZIPダウンロード) |
| ライセンス | MIT(無料・商用OK・改変OK・帰属表示必要) |
| 最新バージョン | v1.6.0(Template M / Opus 4.7対応) |
| リポジトリ作成日 | 2026年3月11日 |
| GitHubスター | 6,000スター超え |
| 対応AIツール | 30以上(推論LLM・コードIDE・画像・動画・音声・自動化・自律エージェント) |
| テンプレート数 | 13個(Template A〜M) |
| 配置設計 | PAC2026(30/55/15比率) |
| 未収録ツール対応 | Universal Fingerprint(4問質問セット) |
| 必要なClaudeプラン | Free以上(コード実行有効化が必要) |
| 動作上の注意 | Claude Skills基盤側の不安定動作報告あり(Issue #26254 等) |
FAQ
Q1. Prompt Masterは日本語で使えますか?
日本語の依頼を入力できる設計になっています。
ただし出力はターゲットツール側の推奨言語に合わせて生成されるため、
英語プロンプトが返ってくることが多いです。
MidjourneyやSoraなど英語前提のツール向けは英語出力の方がむしろ精度が出ます。
Q2. Prompt Masterを使うのに追加料金はかかりますか?
スキル本体はMITライセンスで完全無料です。
Claude本体の契約(Free / Plus / Pro / Max / Team / Enterprise)があれば追加課金なしで動きます。
コード実行機能を Settings → Capabilities で有効にしておく必要があります(出典: Anthropic公式)。
Q3. 公式リポジトリ以外から落としても安全ですか?
Anthropic公式は「信頼できるソース(利用者本人が作成したもの、
もしくはAnthropic提供のもの)以外のスキルは原則非推奨」と明記しています。
Prompt Masterは公式GitHub nidhinjs/prompt-master から直接取得し、
SKILL.mdとスクリプトに目を通してから使うのが推奨運用です。
Q4. PAC2026の30/55/15はどんな根拠で決まっているのですか?
LLMが入力の冒頭と末尾に注意を集中させるU字型バイアス(中央の情報が見落とされやすい性質)を補正する設計で、
参考論文は「Found in the Middle」(arXiv:2406.16008)。
中央に55%を割いて重要情報を厚めに置き、
頭30%で前提固定、
末尾15%で形式縛りという配分になっています(出典: DeepWiki)。
Q5. Tree of ThoughtやChain of Promptは使えないのですか?
Prompt Masterは Tree of Thought / Graph of Thought / Universal Self-Consistency / prompt chaining の4種を意図的に除外しています。
理由はハルシネーション(AIが事実と違う答えを返す現象)を誘発するリスクがあるため。
「only uses techniques with reliable, bounded effects(信頼性が確認され、
効果範囲が限定された手法のみ使う)」というのが設計姿勢です(出典: patterns.md)。
Q6. v1.6.0で追加されたTemplate Mはどんなときに使われますか?
Template M(Opus 4.7 Task Brief)は、
Claude Opus 4.7向けの複雑・多段階・エージェント型タスク専用テンプレートです。
literalism(逐語追従)、
adaptive thinking(適応的思考)、
xhigh effort(最大努力)、
session hygiene(セッション整合性)に対応するルーティング更新も同時に入っています(出典: README)。
このページに出てきた言葉
- skill(スキル)
- Claudeに特定の能力をまとめて教える指示書セット。SKILL.mdを中心にスクリプトやリソースを束ねたフォルダ単位で配布される
- SKILL.md
- スキルの本体ファイル。Claudeがどう振る舞うかを書いた説明書
- リポジトリ
- GitHub上でコードやファイルを保管している場所のこと。フォルダ+履歴管理がセットになったもの
- fork(フォーク)
- 公式リポジトリを自分用にコピーすること。改変や実験に使う
- ZIP
- 複数ファイルを1つに圧縮したファイル形式。GitHubの「Download ZIP」でリポジトリ全体をまとめて落とせる
- MITライセンス
- 無料・商用利用OK・改変OK・配布OKの寛容なライセンス。元の著作権表示を残すだけが条件
- PAC2026
- Prompt Masterの配置ルール。プロンプトを頭30%・中55%・末尾15%に分けて配置する設計
- Universal Fingerprint
- Prompt Masterが未収録のAIツールに対応するための仕組み。4問の質問だけで新しいツール向けのプロンプトを組む
- ハルシネーション
- AIが事実と違う答えを自信満々に返す現象。プロンプト技法の中にはこれを誘発しやすいものがある
- コード実行(Code execution)
- Claudeが内部のVM(仮想マシン)でスクリプトを動かす機能。カスタムスキルを動かす前提として有効化が必要
参考リンク
- Prompt Master 公式GitHub
- Prompt Master README
- Prompt Master templates.md(13テンプレート詳細)
- Prompt Master patterns.md(除外手法と37パターン)
- DeepWiki: Prompt Master アーキテクチャ解説
- Anthropic公式 Agent Skills overview
- Anthropic公式 Agent Skills発表ブログ
- Anthropic公式 エンジニアリングブログ
- Anthropic公式 Use skills in Claude
- Anthropic公式 How to create custom skills
- 論文「Found in the Middle」(arXiv:2406.16008)
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