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Gemini 3.5 Flashは「3.1 Proより40%安い」も「前のFlashより3〜6倍高い」も、両方ほんとです。
無料のGeminiアプリで使う人は前と同じ月額で性能アップ、APIで使う開発者は同じ処理で請求が跳ね上がる。
同じモデルなのに損得が逆になります。
飛びつく前に、手元の使い方が「無料アプリ側」か「API課金側」かだけは確認しといた方がいい。
この記事はGeminiを業務で使い、ChatGPTやClaudeと使い分けているAPIコストが気になる人向け(モデルの料金とトークンの基本が分かれば読めます)。
2026年5月19日のGoogle I/Oで、Gemini 3.5 FlashがGeminiアプリの新しいデフォルトモデルとして発表されました(出典: Google公式ブログ)。
日本語の速報はほぼ全部「軽量Flashが去年の最上位Proを抜いた」という性能の話で盛り上がっています。
それは事実です。
ただ、私が気になったのはそこじゃない。お金の流れの方です。
「Proより40%安い」と「前のFlashより3倍高い」はどっちも本当なの?
答えはどっちも本当です。比べる相手が違うだけ。
Gemini 3.5 FlashのAPI料金は、入力が100万トークンあたり1.50ドル、出力が9.00ドルです(出典: Google API価格ページ)。
これを去年2月に出た最上位のGemini 3.1 Pro(入力2.00ドル / 出力12.00ドル)と並べると、たしかに25%ほど安い。
Googleはこの比較を前面に出しています。
「最上位級の性能が、最上位より安く」というわけです。
問題は、もう一方の比較。
同じFlash系の前モデルと並べると景色が一変します。
| モデル | 入力 / 100万トークン | 出力 / 100万トークン | 3.5 Flashとの差 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash(新) | $1.50 | $9.00 | 基準 |
| Gemini 3 Flash Preview(旧) | $0.50 | $3.00 | 3倍に値上げ |
| Gemini 3.1 Flash-Lite(旧・軽量) | $0.25 | $1.50 | 6倍に値上げ |
| Gemini 3.1 Pro Preview(旧・最上位) | $2.00 | $12.00 | 25%安い |
同じ「Flash」という名前を信じて前モデルから乗り換えると、入力で3倍、軽量版のFlash-Liteから移ると6倍。
請求書が一晩で別物になる人が出ます。
あるベテランの技術評論家は、この値上げをはっきり名指ししています。
新しい3.5 Flashは3 Flash Previewの3倍、3.1 Flash-Liteの6倍の価格だ。
出典: Simon Willison's Weblog
大手AI3社とも、APIの顧客がどこまでの価格に耐えるかを探り始めているように見える。
その評論のタイトルからして「more expensive(より高い)」という単語が入っています。
日本語記事の歓迎ムードとは温度がだいぶ違う。
なぜ「per-tokenは安い」のに実際の請求は高くなるの?
ここがこの記事で一番伝えたいところです。
表面の単価と、実際に払う額は別物だから。
独立計測のArtificial Analysisが面白い数字を出しています。
同じ知能テスト(Intelligence Index)を1回まるごと走らせるのに、いくらかかったか。
| モデル | テスト1回の実行コスト | 設定条件 |
|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash | $1,552 | high thinking時 |
| Gemini 3.1 Pro Preview | $892 | 標準 |
単価では3.1 Proより25%安いはずの3.5 Flashが、同じテストを走らせると逆に75%も高くついた。
前世代のGemini 3 Flash比だと5.5倍のコストです(出典: Artificial Analysis)。
なんで逆転するのか。答えは「thinking(思考)トークン」です。
3.5 Flashは答える前に裏で大量に考える。
その思考分も出力トークンとして課金されます。
出力単価は入力の6倍の9.00ドル。
たくさん考えるほど、安いはずの単価が雪だるま式に効いてくる。
ここで注意が1つ。
この1,552ドルという数字は「high thinking設定」に限った話です。
デフォルトのmedium設定なら思考量は減って、コストはこれより下がります。
なので「常にProより高い」と読むのは間違い。
「フルパワーで考えさせると逆転しうる」が正確なところです。
1トークンあたり3倍高くても、1回で成功するモデルの方が、安くても何度もやり直すモデルより結果的に安くなることがある。
出典: Evolink.ai
つまり「単価だけ見て判断するな、再試行まで含めた実コストで見ろ」というのが両方の論者に共通する話。
私はここは同意です。
サイレントに性能が落ちるトラップって何?
料金とは別に、もう1つ静かなワナがあります。これは移行する人だけハマる。
旧モデルのgemini-3-flash-previewから3.5 Flashにコードをそのまま差し替えると、thinking設定のデフォルトがhighからmediumに勝手に下がります。
つまり、何も変えてないつもりでも、昨日より考えなくなったモデルに置き換わる。
Lushbinaryのブログがこう警告しています。
gemini-3-flash-previewから移行すると、デフォルトのthinking_levelがhighからmediumに下がる。
出典: Lushbinary
明示的に設定しないと、昨日より静かで頭の鈍いモデルを使うことになる。
料金は上がる、性能設定は黙って下がる。
気づかないと最悪の二段構え。
これはちょっとえぐい。
前モデルから3.5 Flashに移行するときの確認手順
旧Flashのコードを動かしている人が、性能ダウンと料金爆発を同時に避けるための手順です。
一次ソースの推奨をもとに再構成しました。
- STEP1: 移行前に旧モデルの月間トークン消費を控える。 入力と出力それぞれの100万トークン単位の量をメモしておく。これがないと値上げ幅の試算ができません。
- STEP2: 新料金で再試算する。 入力1.50ドル / 出力9.00ドルを当てて、月額がいくらになるか計算する。前モデルの3〜6倍に膨らむなら、その用途で移行する意味があるか先に考える。
- STEP3: thinking_levelを明示的に指定する。 リクエスト時にthinking_levelをコードへ書き込む。前と同じ性能が欲しいなら
high、コスト優先ならlowやminimal。デフォルト任せにしない。 - STEP4: 少量で試走してコストとレイテンシを実測する。 いきなり本番に流さず、数十リクエストだけ流して実際の出力トークン量と速度を確認する。ここで想定とズレてたら設定を調整する。
引っかかりやすいのはSTEP3。
設定を書かずにデフォルトのままにすると、上のトラップに直撃します。
無料アプリ組とAPI課金組で、損得が逆になるのはなぜ?
同じ3.5 Flashなのに、使う立場で得か損かが真逆になります。
ここが一番おもしろい構造。
Googleは消費者向けと開発者向けで、お金の取り方を分けています。
| 立場 | 使い方 | 3.5 Flashでどうなったか | 負担する人 |
|---|---|---|---|
| 無料アプリ組 | Geminiアプリ・検索のAI Mode | 月0ドルのまま性能アップ | Googleが全額負担 |
| API課金組 | 自作アプリ・ツールに組み込み | 前Flash比3〜6倍に値上げ | 開発者が全額負担 |
Geminiアプリの無料ユーザーは、3.5 Flashがデフォルトモデルとして降ってきます。
月額は0ドルのまま。
Googleは公式コピーで「available today to billions of people(今日から数十億人が使える)」と書いています(出典: Google公式ブログ)。
一方、APIで組んでる開発者は、同じモデルに前の3〜6倍を払う。
Google Developer Forumにはこんな声が並んでいます。
これってついさっきGoogle I/Oで「開発者と企業のコストを節約できる」と宣伝されてなかったか?
出典: Google Developer Forum
同じフォーラムには「3日でAPI費用が4倍になった」「効率的なプロンプトを書く開発者ほど損する」といったスレッドが立っています。
現場の温度感はけっこう荒れている。
私は、この非対称にGoogleの戦略がはっきり出てると思います。
数十億人にタダで配って囲い込み、その原資をAPI顧客から回収する。
The-Decoderによれば、これはGoogleだけの動きじゃない。
Anthropicが約30〜40%、OpenAIが約50〜90%の「隠れた値上げ」をしていて、3社そろってAPIユーザーに寄せている流れだそうです(出典: The-Decoder)。
結局、3.5 Flashに乗り換えるべきなのは誰?
立場ごとに判断を分けます。私の見方も添えます。
| あなたのタイプ | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| Geminiアプリの無料/有料ユーザー | そのまま使ってOK | 料金据え置きで性能が上がる。考えることなし |
| エージェント・コーディング用途のAPI開発者 | 試算してから移行 | Terminal-Bench 76.2%など性能は高い。再試行が減るなら値上げ分を回収できる場合あり |
| 翻訳・字幕など軽量大量タスクのAPI開発者 | 急いで移行しない | Flash-Liteのままが安い。下の試算参照 |
軽量タスクの人は特に注意です。
Apiyiの試算では、月1,000万入力 / 500万出力トークンの規模で、3.5 Flashは月1,800ドル、Flash-Liteなら月300ドル。
年間で1万8,000ドルの差が出ます(出典: Apiyi.com)。
翻訳に高度な推論はいらない。
なのに高い方に乗り換えたら、ただの払いすぎです。
私は軽量タスクの人ほど、新しさに飛びつかず据え置きを勧めます。
逆に、複雑なエージェント処理をやってる人は性能で得する可能性がある。
3.5 FlashはコーディングのTerminal-Bench 2.1で76.2%、ツール呼び出しのMCP Atlasで83.6%と、去年の最上位Gemini 3.1 Proを上回っています(出典: Google公式ブログ)。
やり直しが減れば、単価が上がっても総額は下がる、という例の話です。
速度も売りの1つ。
Artificial Analysisの計測で約284トークン/秒、GPT-5.5(約90 t/s)の3倍超の速さです(出典: Artificial Analysis)。
ただ知能の総合点では、Artificial AnalysisのIntelligence Indexで55点・5位。
GPT-5.5が60点で1位、Claude Opus 4.7と3.1 Proが57点でその下です。
最速だけど最賢ではない、という立ち位置。
手元の用途で移行コストを見積もる手順
乗り換え判断を感覚でやると後で泣きます。3ステップで数字に落とす手順です。
- STEP1: 手元の用途を「軽量・大量」か「複雑・エージェント」かで仕分ける。 翻訳・分類・字幕は前者、自律的に複数手順を踏むタスクは後者。前者ならFlash-Lite継続が基本線。
- STEP2: 月間の入力・出力トークン量を出して新料金を当てる。 入力1.50ドル / 出力9.00ドルで月額を計算。バッチ処理なら入力0.75ドル / 出力4.50ドルと半額になるので、急がない処理はバッチ前提で見積もる。
- STEP3: 再試行率の改善を加味して比較する。 旧モデルで何回に1回失敗していたかを思い出す。3.5 Flashで失敗が減るなら、その分の再実行コストを差し引いて総額で判断する。
STEP2のバッチ処理は見落とされがち。
即レスがいらない処理なら、ここで半額にできます。
FAQ
Gemini 3.5 Flashは結局、安いんですか高いんですか?
比べる相手で変わります。
最上位だったGemini 3.1 Pro(入力2.00ドル / 出力12.00ドル)より25%安く、前世代のGemini 3 Flash Preview(入力0.50ドル / 出力3.00ドル)より3倍高い。
あなたがどちらから乗り換えるかで、安くもなり高くもなります(出典: Google API価格ページ)。
無料のGeminiアプリでも3.5 Flashは使えますか?
使えます。
2026年5月19日からGeminiアプリのデフォルトモデルになり、無料プランでも月0ドルのまま利用できます。
値上げが効くのはAPIで組み込む場合だけです(出典: Google公式ブログ)。
per-tokenが安いのに実コストが高くなるのはなぜ?
3.5 Flashは答える前に大量の思考トークンを消費し、それが入力の6倍の出力単価で課金されるためです。
Artificial Analysisの計測では、high thinking設定で同じテストを走らせると3.1 Proより75%高くつきました。
デフォルトのmedium設定ではこれより下がります(出典: Artificial Analysis)。
前のFlashからコードを移行するとき注意点は?
thinking設定のデフォルトがhighからmediumに下がります。
明示的にthinking_levelを指定しないと、料金は上がったのに性能設定は静かに落ちた状態になります(出典: Lushbinary)。
翻訳や字幕などの軽量タスクでも乗り換えるべき?
急がない方がいいです。
Apiyiの試算では月1,000万入力 / 500万出力規模で、3.5 Flashが月1,800ドル、Gemini 3.1 Flash-Liteなら月300ドル。
年間1万8,000ドルの差が出ます。
高度な推論がいらない処理は安い方が合理的です(出典: Apiyi.com)。
Gemini 3.5 Proはいつ出ますか?
Google公式は2026年6月のリリースを予定と発表しています。
すでに社内で使われているとのこと。
3.5 Flashで足りない最上位性能が必要なら、Proを待つ選択肢もあります(出典: Google公式ブログ)。
このページに出てきた言葉
- トークン
- AIが文章を処理する単位。料金は「100万トークンあたり何ドル」で決まる
- 入力 / 出力トークン
- AIに送る文章が入力、返ってくる文章が出力。Gemini 3.5 Flashは出力が入力の6倍と高い
- thinking設定
- AIが答える前にどれだけ深く考えるかの段階。minimal/low/medium/high の4段階
- thinkingトークン
- AIが裏で考えるときに使うトークン。出力として課金されるので深く考えるほど高い
- ベンチマーク
- AIの性能を測る共通テスト。Intelligence Indexやコーディング用のTerminal-Benchなど
- レイテンシ
- 依頼してから返事が返るまでの待ち時間。短いほど体感が速い
- エージェント
- AIが指示を待たず複数の手順をAI自身で進める使い方
- バッチ処理
- リクエストをまとめて後で処理する方式。料金が約半額になる
- Flash-Lite
- Geminiの中で一番軽くて安い種類。翻訳や字幕など大量・単純な処理向け
参考リンク
- Google公式ブログ: Gemini 3.5発表
- Gemini API価格ページ(公式)
- Artificial Analysis: Intelligence Index・実行コスト・速度計測
- Simon Willison: 価格批判の一次評論
- Lushbinary: 移行トラップとthinking_level
- Google Developer Forum: 値上げへの開発者の声
- Apiyi.com: 軽量タスクでのFlash-Lite比較試算
- The-Decoder: 3社共通のAPI値上げトレンド
- Evolink.ai: 再試行込みの実コスト判断
※この記事の内容は執筆時点のものです。AIは進化が速い分野のため、最新の仕様は公式サイトでご確認ください。